ライフストーリー
これは、私、松島高弘が歩んできた人生の物語です。
社会に出て経験してきたこと、試行錯誤、出会いや流れから現在の研修講師という仕事に就きました。日頃から、大切にしていることを綴っています。
Story01今いるところでベストを尽くす
ルーティンワークに流されず
現場で主体的に動いた、入社1~2年目
特に「これがやりたい!」ということはなく、色々なことができそうとJR東日本に入社しました。最初の配属先は西船橋駅。駅員として改札やみどりの窓口でお客さまに対応したり、駅のホームで旗を振ったりしていました。作業ダイヤ通りの仕事です。泊まり勤務もありました。夜中の2時に起きて、一人で10台近くある自動券売機の釣り銭の入れ替え作業は大変でした。ルーティンワークにモチベーションはだんだんと下がっていきました。
他の会社で働く大学時代の友人たちは、それなりに頑張っていて、自分はこんなことでいいのかと焦りもありました。転職支援塾に通い始めるも、そのときの講師の方から「いまのような受身の姿勢では、どこの企業でも務まらない」と言われ、まずは今いるところでベストを尽くそう!と考えるようになります。
具体的には、業務改善活動です。お客さまのいない合間に自動券売機の掃除をしたり、目に付きにくく利用されていないと感じていた定期券の自動継続発行機に案内板を作ったりと、細かいことですが取り組み始めました。ルーティンの仕事の中でも「今日は何を変えようかな?」と考えることで、業務が楽しく感じられるようになっていきました。研修で伝える、「やらされ感ではなく、主体的に働くことで仕事は楽しくなる」というメッセージは、自分の実体験に基づくからこそ伝わるのだと思います。
2年目になると、そのまま駅員として駅に残る選択肢もありましたが、高卒の同期20名前後のリーダー役が求められる車掌になろうと思い、車掌区に異動しました。そこで、同期の意識を互いに高め合おうと、勉強会や飲み会を頻繁に開催したり、コミュニケーションノートを作成したり、関係性を創ろうと奮闘。やる気がある高卒の同期には、大卒資格が取得できる国内大学留学制度の勉強会なども行いました。
一糸乱れぬチームができていると自分では思っていましたが、私のやり方に反発して陰口をたたく仲間が出てきました。よろしくないと言われていた髪を染める仲間もいました。それに対して、私は正面切って向き合う勇気を持てず、そのまま放置してしまっていました。リーダーとして相手に向き合うということは、口で言うほど簡単ではない。反発されること、嫌われることへの不安や恐れを抱えきれなかったのだなと、今振り返ると思います。よく指導においては、「相手に向き合うことが大事」と言います。研修では、正論を振りかざすことなく、相手から反発されること、嫌われることへの不安や恐れへの対処法を、独自のワークを通じて提供しています。
Story02人を巻き込み、ヘルプを出す大切さ
自分の事業アイディアを形にできず
悔しさを味わう、入社4~6年目
入社4年目を迎える頃、鉄道事業よりも、より自由度が高そうな関連事業のほうが自分に合っているのではと思い始めました。そんなとき、不動産事業のプロフェッショナル育成を目的とした、「不動産鑑定士養成研修」があることを知り、思い切ってエントリーしました。無事、試験に合格し、本社の不動産事業の部署に配属になりました。
不動産鑑定業務に携わりながら、若手主導で新規事業を提案するプロジェクトに参加しました。チームで提案した「新幹線2階建てグリーン車でのクイックマッサージ事業」が優秀賞を受賞し、事業化することになりました。この経験から、資格を活かして不動産の専門性を磨くよりも、新規事業に携わりたいという思いが高まっていきました。
その頃、社内ベンチャー制度というものがありました。優れたアイディアを提案すると、新規事業の部署に配属になり、事業化に携われました。私は、携帯電話を鍵にした宅配ロッカーを駅に置く事業を提案し、念願の新規事業の部署への異動を果たしました。
意欲満々で自分が提案した事業化に携わることになった私ですが、仕事をなかなか前に進められませんでした。入社5年目でありながら、現場と資格取得の養成研修時代が長かった私は本社での仕事の基本的な進め方が分からなかったのです。
周りの先輩や上司に相談することもできず、関係部署に働きかけることもできず、自分ひとりで必要かどうか分からない資料を黙々と作っていました。
今思うと周りの先輩に「どうしたら良いですか?教えてください。」と頭を下げて聞けばよかったのに、それができませんでした。
もともとプライドが高い上に、「手柄を独り占めしたい」という思いもありました。また、自分の企画を否定されるのも怖かったのです。
ほとんど何も進められずに3ヶ月、半年と時間が経過するうちに、グループ会社から同種の企画が提案され、その事業が先行してしまい、自分の何とか実現したいと思っていた企画をあきらめることになりました。
この時の自分に伝えたいという想いから、研修では、人に働きかけ、巻き込む上での「心のブレーキ」のゆるめ方を伝えたり、自分独りよがりのエゴを超えた目的意識の必要性を紹介しています。
Story03研修講師の道へ
「自分が本当にやりたいこと」を
見つけるプロセス、入社7~10年目
「新規事業を生み出すビジネスリーダーになりたい」との想いで社内の海外留学制度にエントリーするもの、選考試験は不合格。その替わりとしてビジネスを学ぶべくグロービスに通い始めました。当時仕事は、駅構内に無線LANを取り付けてビジネス展開を検証すること。無線LANの可能性と、運営の大半を任されていることから、当時は「自分は200名以上いる同期の中で、一番楽しい仕事をやっている」と感じていました。商用化の検討を進める段階で、更に仕事が面白くなってきた頃、突如、インターネット事業を担当するグループ会社への出向の辞令を受けました。志半ばで無線LANの仕事から離れなければならないことに、とても気落ちしました。
担当となったネットショッピング事業は、全く取り組む意義を感じられないものでした。会社に反発する気持ちもあり、転職活動を始めました。ある程度は評価されると思っていましたが、全くうまくいきませんでした。自分の経験や経歴は大したことではないのだと感じ、更に落ち込みました。グロービスでの授業でも、ついていけなくなることもあり、「新規事業を生み出すビジネスリーダーになる」という当時の目標に対して、自分は本当にそうなりたいのか疑問に感じ始めました。
自分のモヤモヤした気持ちを解消したいと思いから、グロービスでのキャリアのイベントに参加しました。率直な悩みを講師の方に質問していたことで注目され、イベント後の飲み会で何人かの方が話し掛けてくれました。その中に、私に対して即興コーチングをしてくれる方がいました。よく分からないうちに、家族旅行することをその方に約束していました。そのインパクトが大きく、コーチングすごい!と感じ、「自分の本当にやりたいことを見つける」ということをテーマに、その方のコーチングセッションをクライアントとして受けることにしました。
コーチングで学んだことは、「人生の目的は、幸せに生きることである」ということ。例え、やりたいことや夢が明確でなくても、自分が大切にしたいと思うものを大切にしていけば、幸せに生きられるのではないかということです。クライアントとしての経験をきっかけに、自らもコーチングを学び始めました。
その頃、妻が二人目の子どもを出産後、体調を崩していました。ちょうど出向期間が明けて、Suicaビジネス担当者として本社に戻るということになっていました。自分にとって家族こそが一番大切にしたいと感じていたこともあり、子どもが2歳になるまで、1年半の育児休職を取得することにしました。育児休職中は、家族との時間を大切にする中で、パーソナルコーチングの経験を積んでいきました。
また、母校の学生の就職支援をやってみたいと思い立ち、早稲田大学のキャリアセンターで、学生へのアドバイスやワークショップの企画運営をしました。「人のキャリアを支援したい」という思いが強くなったタイミングで、グロービス時代の講師の方から紹介されたのが、研修講師の仕事でした。
振り返ってみると、会社員時代、自分のキャリアを自分で切り拓いていったという感覚は常にあります。社員の「キャリア自律」が人事上の課題として注目されていますが、私は自分の経験を踏まえて、組織や上司に依存することなく、自分のキャリアの主導権を自分で握ることに大切さを伝えています。
Story04感情を取り扱う
カウンセリングとの出会い
講師の軸がより明確になる、独立11年目以降
2017年から、野口嘉則さんのオンライン講座を受講しました。ブログやメルマガを読んだり、ミリオンセラーの『鏡の法則』を初めとした著書を愛読していました。オンライン講座の中で、自分をあるがままに受け入れる「自己受容」こそが、自信づくりや自分軸づくりに重要という内容でとても興味深く、印象的でした。その後、カウンセリング養成講座の案内があり、もともとカウンセリングを仕事にしたいという思いはありませんでしたが、何かの縁かもしれないという考えと、研修プログラム作りの参考になるかなという思いで、参加しました。
それまで、カウンセリングについて、心が病んでいる人に対して関わる手法だと思っており、なにかコーチングに比べて受身的な印象で、対象となる人も限られるのではないかと感じていました。ただ、講座の説明の中で、「カウンセリング=人の心の成長を支援する」という定義をきいて、これは、自分も含めて、誰もが必要であるアプローチだと感じました。
クライアントとして、カウンセリングを受けることもありました。私は研修講師として、主体的な生き方、つまり「変えられない他人や環境に原因を求めるのではなく、変えられる今の自分に注力する」という生き方の大切さをずっと伝えてきました。私自身それを体現する人でありたいと強く思っています。
一方で、その生き方をしている自分がしんどくなることもありました。
家族から、自分にとっては理不尽だなぁと感じる言い方や接し方をされたり、相手にとって良かれと思って言ったりやったりすることが、受け入れられるどころか反発されたりすると、怒りで自分が抑えられなかったり、無力感に襲われ、とことん気持ちが沈んだりすることがありました。自分が伝えている主体的な生き方を体現できないことへの情けなさも感じました。
そんな私は、カウンセリングを受けることで、ずいぶんと気持ちが楽になりました。丁寧に気持ちを扱っていただき、とことん共感してもらうことによって、自分はこのままでいいんだという安心感や癒やし、自分に対して「よくやっているね」というねぎらう気持ちが生まれ、結果的に家族に対しても、より受容的に関われるようになりました。
その経験を通じて、カウンセリングって素晴らしいなぁと感じ、研修講師と同時に、カウンセラーとして活動してきたいと思い、現在は、研修講師の仕事に支障のない範囲で、人数を絞ってカウンセリングを行っています。カウンセリングを学んでから、研修でも「どんな意見でも否定せずに聞き入れてくれる」「笑顔で受け止めてくれるので、安心して発言できる」といったコメントを頂くようになりました。
主体性発揮には自分の行動を妨げる感情への対処が大切だと研修で伝えていました。カウンセリングやEQ(感情知能:Emotional Intelligence Quotient)を学んで、感情には意味があること。その感情を押さえ込もうとするのではなく、あるがままに受け容れることが、結果的に感情に適切に対処できるだけでなく、地に足着いた自信がうまれ、主体性発揮の土台となると考えるに至りました。